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会計業界特集

会計業界特集

会計業界とは
会社や団体、組織の会計処理を手伝ったり、改善策や関連対策を提示したりすることで、顧客の会計処理の健全性を高め、また、顧客による会計処理内容の正当性や健全性を第三者として検証(監査)する専門的な知識と手法を提供する仕事です。

ある調査によると、米国の会計監査サービス売り上げは2019年に総額1200億ドルに達すると予想されます。2019年までの過去5年間の年平均成長率は4.8%と試算され、米国内監査法人(会計監査サービス会社)の数は約10万2200社、従業員総数は約54万人弱と見積もられます。世界市場は約4640億ドルで、利益率がもっとも高い業界の一つとも言われています。  

監査法人は、会計の専門家集団としての立場から、顧客(会社)が作成した財務報告書に対し一定の信用を付与することを認められた唯一の存在です。また、上場会社は、第三者監査を受けた財務報告を開示することが法律で義務づけられているので、一般事業会社がそれを順守するためには、監査法人に監査を依頼しなければなりません。監査法人の業務内容を英語で「assurance(保証、裏付け)」と表現する所以もそこにあります。

サービス売上
サービス売上
1200億ドル(2019年)
年平均成長率
年平均成長率
4.8%
監査
米国内監査法人
(会計監査サービス会社)
10万2200社
監査
従業員総数
約54万人


また、いずれのサービスも、顧客(一般事業会社)の信用度を高め、法令順守を支援し、税支出を抑えることを助けるという任務を負っています。それらは投資家の保護につながり、したがって、自由資本主義社会の基盤の一つである資本市場の健全な機能の担保に寄与します。

業界分野
監査法人の業務には、大別すると監査と税務とアドバイザリーという三つのサービス分野があります。 それら三つの主要部門のほか、以下の様に細かな専門分野に分類されることもあります。

監査
顧客会社が作成した財務諸表の信用性を担保することが最大の役割。一般事業会社の財務諸表が会計基準に則して作成されているかどうかについて意見するために監査する。また、第三者による財務監査を受け入れることは、証券取引法上、上場会社に法的に義務化されている。中小の会計サービス会社の場合には、中小企業の経理課を助けるために財務諸表の作成に携わることもある。  

税務
顧客会社の節税をはじめ、税法の専門家として税金対策や税制への対応(法令順守)について助言する。

アドバイザリー
顧客会社の投資先または投資検討先、あるいは顧客会社が買収しようとしている会社に関する財務分析や企業評価額の算出、デュー・デリジェンス(Due diligence)*1、ソックス(SOX)法*2、内部統制*3に関して助言することが主な仕事。また、私企業が株式上場する際に、証券取引所や関連当局(例えば証券取引委員会)に書類を提出し上場を申請するための事前監査や内部統制の準備を請け負うサービスもあるため、監査法人のアドバイザリー部門はコンサルティング部門として位置づけられる。
*1 デュー・デリジェンス(Due diligence):任意の意思決定や行為が法的責任を負うことになるかどうかを事前調査によって見極めることで、監査業界では、主に投資やM&Aにともなう投資先調査やリスク分析、価値算定を指す
*2 ソックス(SOX)法:一般事業会社の開示情報の信用性を高めて投資家を保護するための法律
*3 内部統制:会社組織の事業運営内容の適正を検証して向上させる体制構築

財務会計
一般事業会社の財務情報を外部利用目的のために監査して報告する仕事です。投資家や潜在的投資家、債権者がそういった外部利用者になることが一般的。監査法人はその場合、当該企業の事業取引記録内容を検証し、GAAP*4に準拠してその書類を作成し提出する。
*4 GAAP:generally accepted accounting principles、公正妥当と一般に受け入れられた会計原則

管理会計
顧客会社の管理職が目的を達成するための意思決定を支援する財務的方策や分析内容を提供する仕事。同分野では、内部での方策と財務報告がコスト効果分析を土台とすることから、個々の会社にそれぞれのやり方があり、GAAP*4に準拠した材料に必ずしも基づいているとは限らない。そのため、目的達成のために外部からの財務的助言と分析を求める場合に監査法人が起用される。
*4 GAAP:generally accepted accounting principles、公正妥当と一般に受け入れられた会計原則

会計情報技術(IT)システム
会計データの処理と管理のための電算システムおよび情報技術システムに関する助言を提示することが同分野での主なサービス。各種のデジタル端末の種類の増加やソフトウェアの激増をはじめ、人工知能基盤のシステムが普及し始めたことによりこれまでには不可能だった自動化や効率化が可能になったため、近年になって特に需要を伸ばしている分野でもある。さらに、会社をねらったサイバー攻撃が激増したことも同分野の成長要因となっている。技術関連での監査や助言は、コンサルティング業界と競合する分野でもある。

法務&法的会計
法的または法廷争いに関するサービスであり、会計サービスのなかでやや特殊な分野と位置づけられている。日本語では法廷会計と呼ばれ、それを専門に担当する専門家を法廷会計士と呼ばれる。法的リスクの査定や分析、訴訟の際に証拠として必要とされる材料や見解、専門知識を原告または被告の弁護団からの要請に応じて提供する。
キャリアパス
監査法人では、弁護士事務所やコンサルティング会社と同様に、有限責任合同会社(Limited Liability Partnership=LLP)という会社組織のかたちをとるため、他業界のLLPと同様にパートナーが最高到達ポジションです。 ポジションは下記のように昇進するのが一般的です。

パートナー
自社株を取得できるため経営側になる。日本の監査法人によっては、パートナーのなかにいくつかの階級が設けられ、社員パートナー(実質的にはディレクター)と上席パートナーに区別される場合もある。その場合は、上席パートナー以上になってから経営側に立つ。

マネージング・ディレクター
株を持たないパートナーのような管理職。

シニア・マネージャー
3~5年程度。

マネージャー
シニア・アソシエイト後の2~3年。プロジェクトリーダーとして業務改革・組織変革を実現すると共に、ソリューション開発、顧客開拓、人材育成を担う。

シニア・アソシエイト
アソシエイト後から3~4年後のポジション。

アソシエイト
入社から2年間のポジション。会計の基礎を学びながら仕事を行っていく。正しく正確に素早く処理を行うことが求められる。日本の場合には、アソシエイトという名称よりアカウンタントいう名称が使われることも多い。

転職する場合の注意点
シニア・アソシエイト以上のポジションを経験した場合:
監査部門の場合には、商社や保険会社をはじめとする一般事業会社大手の経理部か内部監査部、内部統制部に移ることが一般的だとみられます。また、コンサルティング会社への転職もそれほど珍しくありません。商社や保険大手の一部には、Big 4出身の会計士を中途採用として受け入れることを習慣化しているところもあります。
税務部門の場合には税務専門コンサルティング会社への転職が一般的です。
アドバイザリー部門の場合には一般事業会社の投資部門が典型的かもしれません。実績がある場合には投資銀行やコンサルティング会社に転職する選択肢も増えます。
資格・資質
監査法人への就職に際し、学位や資格は関係ありませんが、会計の基礎を学び終わっていることが前提です。 大学での専攻については、米国ですと会計学部やファイナンス学部、MBAが主流です。日本では、商学部や経済学部、経営学部、法学部の出身者が多いようです。資質としては以下を必要とされることが多いです。
歴史
監査サービスは1000年以上前から存在するという見方もありますが、現在のような専門的業種として確立されたのは、1800年代後半のイギリスという見方が有力です。産業革命から数十年後の時期にあたるので、産業革命による産業の発達や規模拡大、会社組織の増加、投資の拡大を背景に、不正会計も増えたことから、会社経営に関する財務上の健全性を高めるために会計の重要性が増し、それと同時に、財務情報の正当性を公正中立の立場から証明するという必要性が強まったといういきさつがあります。1929年の世界大恐慌も、会計監査の必要性を強めた一因ともみられます。

19世紀末に発達した監査サービス業界は、不正会計問題や、それを防ぐための法律制定または法改正によって複雑化し、その結果、法規制に精通した専門家たちが台頭し始めました。当時の欧州各国では、そういった動きを受けて専門資格者に関する制度を整備し、それが計理士という資格職の誕生につながりました。計理士という資格は現在、存在しませんが、その代わりに会計士や税理士、特に公認会計士(CPA)という資格職が同業界の標準的存在になりました。日本でも、欧米のそういった動きから10~20年遅れで整備されました。    

会計監査サービスは、1900年代中盤になっても絶えない粉飾決算と継続的な法改正によって需要を伸ばし続けました。その間、先進諸国での商法や公認会計士法、証券取引法、会計報告基準、財務諸表関連規則、監査基準、そのほか数々の関連法規制の制定や改定を受けて、専門性がますます求められるようになりました。大きな不正会計問題が発覚するたびに関連法や関連基準が厳格化されるため、一般事業会社の経理課では対応しきれないという実情もあります。また、上場会社が第三者(外部)による監査を受けることが法律によって義務化されたことも、監査法人業界の成長と安定に非常に大きく寄与した要因です。

知ってる?
同業界には、「Big 4(ビッグ・フォー)」と呼ばれる世界4大事務所があります。それらは、Deloitte、Ernst & Young (EY)、KPMG、そしてPricewaterhouseCoopers (PwC)の4社で、会計業界のほぼ全ての分野でサービスを提供しています。上場会社の大部分と大きな私企業(非上場会社)の大部分は、それら4大監査法人のいずれかの顧客と言えます。

監査法人でのキャリア
大手の監査法人では、各種の職能訓練(専門知識研修)を受けることが制度化かつ義務化されているため、社員らは入社してからほぼ毎年、新たな会計基準や税制、専門的な監査手法を一定時間以上勉強することが義務づけられています。そのため、一般事業会社からみると、監査法人で数年働いた人材は、それらの内容をしっかり勉強し続けて専門知識と技能を身につけた即戦力としてみなされます。